e・パーセル電子宅配便 - イーパーセル株式会社

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2012年3月13日 『日経ビジネスオンライン「記者の目」』 記事要約

「グーグル、ヤフーを訴えています」
                                国産ITベンチャーが特許侵害で大手13社を提訴

 「米グーグルや米ヤフーといった海外の大手IT(情報技術)企業を、特許侵害で提訴しているところです」。最初にこう聞いたときは正直、本当なのかと耳を疑った。発言の主が、無名の国産IT(情報技術)ベンチャーの社長だったからだ。

 

顧客には日産の名前

会社名は1996年創業のイーパーセル。話の主は北野譲治社長。大容量なファイル送信サービス「e・パーセル」をネット経由で提供しているクラウド事業者である。e・パーセルの売りものは、通信環境にかかわらず、数100メガバイトの大容量ファイルを確実に送信することだ。

「世界の大手IT企業が活用しているネット関連技術の特許を握っている」とイーパーセルの北野譲治社長

「容量の大きい3次元CAD(コンピューターによる設計)データなどを、ネットワークが細くても確実に届けることができるサービス。当社は電子ファイルの米フェデックスを目指してビジネスを展開している、と自負しています」(北野社長)。

e・パーセルの顧客企業数は国内600社強。主要顧客の1社が、業績が好調な日産自動車だ。日産は2000年に、e・パーセルを採用し、全世界標準のファイル送信システムを構築。海外の部品メーカーなどとCADなどのエンジニアリング系データを効率よくやり取りしているという。

イーパーセルが、米国の特許運用管理会社を介して、米テキサス州で特許侵害訴訟を起こしたのは昨年4月のことだ。

訴訟の相手は、インターネット検索サービス会社やコンテンツ配信会社、通信事業者、インターネット接続事業者、などほとんどのIT企業を網羅している。具体的には、米グーグル、米ヤフー、コンテンツ配信事業大手の米アカマイ・テクノロジーズ、通信事業者大手の米ベライゾン・コミュニケーションズ、携帯情報端末「ブラックベリー」を手がけるカナダのリサーチ・イン・モーション(RIM)など13社である。

「インターネットを使ったビジネスでは今ではお馴染みともいえる必須要素技術を、1998年から2001年にかけて、米国で特許を取得していた。数年前から米国の特許運用管理会社の助言を受け、昨年、勝算ありと見て、提訴に踏み切った」(北野社長)。

 

5つの米国特許の侵害で訴える

一体、イーパーセルはどのような特許を取得しているのか。今回特許侵害で訴えている米国特許は5つだ。;

(1)インターネット検索サービスではお馴染みの検索連動型広告システムで活用する「個人の嗜好や習性、または癖といった情報をネットワークを介して収集・解析する仕組み」(取得時期は2000年)

(2)アプリケーションのバージョンアップ情報をポップアップ通知「自分宛に届いたデータがダウンロード可能になったことを画面上で知らせる仕組み」(同1998年)

このほか、(3)「ネットワークでデータを確実に配送する仕組み」(同2000年)、(4)「ネットワーク環境に合わせて(データの)圧縮率を調整する仕組み」(同2000年)、(5)「同じデータを複数の受信者に送る場合、受信者の事情に合わせてデータ配送の優先度最適化する仕組み」(同2001年)、である。インターネットユーザーであれば、当然のように活用していると思える技術ばかりだ。

訴訟の今はどうか。13社すべてではないものの、今回の訴訟で既に“勝ち”を収めている。「RIMを含む4社と特許ライセンス契約を締結済みだ」と北野社長は手ごたえを感じている。残り9社との交渉も継続中である。

さらにイーパーセルは今後、「国内の大手IT企業が提供する製品・サービスについても、特許侵害がないかどうかを調査し、権利の確認を進める予定」(北野社長)とする。

 

技術力はあっても経営は苦しい

1社あたり数千万円――。イーパーセルが特許ライセンス契約を結ぶことで得られる対価である。

「今回の訴訟に勝ったからといって、経営が盤石になるというわけではない。きれいごとに思われるかもしれないが、世界の著名なIT企業を相手にファイトすることで、日本のITベンチャーにも技術力が高く、知的財産権をきっちりと押さえている企業があるんだ、ということを証明してみたかった」(北野社長)。

日本のIT企業から、革新的な製品・サービスが出てこなくなってから久しい。最近の明るい話題といえば、世界最速をうたう富士通のスパコン「京(けい)」ぐらいだろうか。

「グーグルやヤフーを訴えている」とだけ聞いたときは懸念を感じたが、北野社長の話を詳しく聞くうちに、「国産ITベンチャーも捨てたものではないなあ」と、元気をもらったような気がした。

ネット関連の特許技術を10年以上も前から取得しているイーパーセル。世界の大手IT企業と特許ライセンス契約を結ぶほどの技術力もある。しかし、経営状況は安定しているとはいえないと北野社長は苦笑する。

 

日本のITベンチャーに期待したい

顧客企業の開拓も難航しがちだ。北野社長は「(e・パーセルが)良いサービスだと認めてくれても、大手企業ではないとの理由で成約に至らないケースは多い」と嘆く。

財務体質のしっかりした企業、ブランド力のある企業の製品・サービスを活用したい。これは顧客企業の本音だろう。

日本企業は慎重だといわれる。顧客が技術力を評価するスキル、あるいは自信がないために、大手IT企業一辺倒ということになっている面があるのではなかろうか。

顧客が優れた製品・サービスを見抜ける目利き力を身につければ、ITベンチャーが開発した優れた製品・サービスを活用するケースは増える。ITベンチャーが育つ土壌が出来上がり、世界で戦える新興企業も出てくる、といったことが期待できる。

イーパーセルが、大手IT企業13社とどこまで特許ライセンス契約を結ぶことができるのかどうか。契約を結ぶことができたとして、市場から信頼を得て、世界で戦えるIT企業に成長を遂げることができるのか、今後も注目しようと思う。

 

 

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