e・パーセル電子宅配便 - イーパーセル株式会社

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2013年2月4日 時事通信社『金融財政ビジネス』 (第10306号 P17-19) 記事要約

  [IP解説]日本のVPを取り巻く環境
                    ベンチャー企業の育成による新産業の創出を - 求められる知財活用のプロ

昨年末に自民、公明両党が政権を奪還し、安倍晋三首相の下、「危機突破内閣」が発足した。 経済再生を優先する「アベノミクス」と呼ばれる製作が動き出すことになるが、金融政策および財政政策に加えて、いわゆる3本の矢である成長戦略は、縮小連鎖·じり貧のシナリオが今なお進んでいる「やせ我慢」の経済状況を打破するためにも、極めて重要だろう。 特に、大企業が中心となって進められる産業構造の変革と、規制緩和やベンチャー企業の育成による新産業の創出には、今後の日本の経済発展に資するためにも、大いに期待したいところだ。

 

「九重苦」という現実

一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンターによると、日本のベンチャーキャピタル(VC)による投資額は、2005年度に2345億円、翌06年度には2790億円と非常に高い水準だった。しかし、07年度には1933億円と減少に転じ、08年度は1366億円、09年度には1000億円を割り込んで875億円と急速に減少した後、10年度には1100億円を超え、ようやく回復基調を取り戻した。 一説によると、10年度の米国での投資額は日本の16倍以上だったとのことである。好転の兆しを見せてはいるものの、日本のベンチャーを取り巻く環境が依然として厳しいことに変わりはない。(中略)

 

新たな動き

一方、日本経済新聞社の調査によると、「シードアクセラレーター」と呼ばれる創業初期のベンチャー企業を支援する新しいタイプのVCが、ここ3年ほどで投資実績を伸ばしているようだ。こうしたVCは、出資だけでなくさまざまな事業支援を行い、ベンチャー経営者と「二人三脚」で事業を育てる。(中略)

 

「知」を活用する企業

最近、外国の大企業に対する特許訴訟で目覚しい成果を上げたベンチャー企業が大きく注目されている。電子データ配信サービスのイーパーセルだ。

同社はグーグル·ヤフー·AOL·AT&Tなど世界の有力IT関連企業13社に対して特許訴訟を提起し、既にスマートフォン(多機能携帯電話)「ブラックベリー」を手掛けるカナダのリサーチ·インモーション(RIM、現ブラックベリー)やグーグルも含む6社以上とライセンス契約を締結することで和解し、世界中から大きな注目を集めている。次のターゲットは本命のアップルだそうだ。

イーパーセルが保有する特許は、インターネットを利用して、機密性が高いファイルや容量が大きいファイルの電子配送を安全·確実、そして手軽に実現する技術に関するものだ。同社は、この技術を活用したサービスを世界中の5000社以上に既に提供しているとのことである。

同社の北野譲治社長は「一般的にベンチャーというのは大企業と比較すると金融資産は乏しいのですが、知的資産は豊富にある。そのため、知的資産を戦略的に刺激して、それを金融資産に還元する努力をしなければなりません。具体的には、当社は5つの知的財産を持っていますが、今回はその中の一つである特許資産をライセンス料という金融資産に替える試みなのです。」(「月刊宝島」2012年6月号)と語っている。

一般的に、中小·ベンチャー企業にとって大企業を相手に技術ライセンスを供与することは非常に難しく、実例も極めて希少だ。いわゆるパテントコントロールなどの出現もあり、大企業は自社事業·技術を保護するためにも、外部からの技術導入には極めて慎重である。イーパーセルのように訴訟に打って出るなど、よほどのインパクトがない限り「門前払い」されるケースがほとんどだ。しかも、訴訟には莫大な費用と手間がかかり、成功確率と経済的な見返りを考えると、必ずしも収益的には得策ではないかもしれない。

「気がつけば大手企業に市場を押さえられ、いずれはつぶされるか取り込まれてしまう。」「(特許訴訟という「伝家の宝刀」を抜いたのも)争って有効性を認められなければ知的財産としての価値がない。」という北野社長の思いがあったと報じられている。(日本経済新聞 - 電子版 / 2012.8.16)。世界的に有名な大企業と特許ライセンス契約を締結することができれば、自社の技術とそのブランドの価値が客観的に評価されることになり、その結果、企業価値も格段に高まるというわけだ。

イーパーセルのように、知剤を金融資産にまで高め成功している企業は、実は決して少なくないのかもしれない。特許庁は、知恵と知財を武器に活躍している中小企業等の取り組み事例を紹介した「がんばろう日本!知的財産権活用企業事例集2012」を昨年11月に刊行した。(中略)

 

知財活用の進化と深化

イーパーセルの例に代表されるような、「知財の金融資産化」とは、一般的に馴染みのないものかもしれないが、知財の活用については以下のように概ね5段階の価値の進化·深化があり、その概略を説明したい。
1)防衛的活用 2)優位性確保のための活用 3)事業戦略での活用 4)経営戦略での活用 5)金融資産としての活用

(中略)

特許に代表される知財の本質は、対象技術を独占的に使用し、他社を排除することができる「独占的排他権」にある。しかし、その活用方法には、競合に対する参入障壁として機能させて自社の利益を保全するだけでなく、第三者に対する実施権(ライセンス)の許諾や標準化によって市場での支配力を高めて収益確保を図るなど、戦略的にさまざまな選択肢が考えられる。イーパーセルの例では、大企業からのライセンス収入を確保するだけでなく、技術ひいては企業のブランド価値まで高めた点が特筆されるだろう。資金も乏しく他に経営資源を持たないベンチャーにとっては、知恵や知財が単に事業基盤となるだけでなく、資金調達の手段になるという良い事例だろう。

テクノロジーベンチャーについては、その会社が保有する技術的な側面だけでなく、法的保護やコンプライアンス(法令順守)などの問題、マーケットや事業計画などに関わる経済的に要素、そして経営·事業·知財などの戦略についても併せて議論されなければ、投資や育成·支援は難しい。これらの問題について、個々の専門家からの意見を踏まえながら、経営戦略に生かすことができる人材(真の知的プロフェッショナル)の活躍が、金融界や産業界において求められているのではないだろうか。

(文:知的財産コンサルタント·青山学院大学客員教授 大津山秀樹)

 

 

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