e・パーセル電子宅配便 - イーパーセル株式会社

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2012年4月16日 『週刊 ダイヤモンド 2012年 4/21号』(P10-12) 記事要約

「クローズアップ/CLOSE UP」
                            グーグルなど13社を訴えた国産ベンチャー驚異の実力

ある日本のベンチャー企業が自社の米国特許を武器に米国IT企業を果敢に攻めている。グーグル、ヤフーなど13社を特許侵害で訴え、アップルまで標的に定める。しかも勝てそうであるから驚きだ。そこには自社の特許を活用するという日本企業が見習うべき経営戦略がある。

 

2011年4月、米国テキサス州で、特許侵害に関するある大きな訴訟が起こされた。

訴えられたのは、グーグルやヤフー、AOL、AT&T、そしてアカマイ・テクノロジーズなど、検索サービス大手からインターネット接続事業者、コンテンツ配信企業に至るまでの13社だ。

こうした世界のIT産業をリードする企業を訴えたのは、実は日本企業。しかも、社員わずか8人のイーパーセルというベンチャー企業だ。

無名のベンチャーが世界のトップ企業に訴訟を起こすとは、「なんと無謀な」と一笑に付す向きも多いかもしれない。

しかし、6月から本格的な訴訟手続きに入ると、8月には早速“白旗”を揚げる企業が現れる。

携帯端末「ブラックベリー」を製造するリサーチ・イン・モーション(RIM)だった。

イーパーセルはRIMと特許ライセンス契約を結び和解し、事実上の“勝利”を収めたのである。

その後も立て続けに3社と和解、ライセンス契約を結んでいる。他の企業とも現在争ってはいるが、いずれも勝てる公算が大きそうだ。

日本のベンチャーが世界の大手企業に特許侵害で勝つ例はなきに等しい。なぜ、このベンチャーは勝つことができるのであろうか。

 

世界の頭脳を結集させ「電子宅配便」を開発

イーパーセルの事業は、容量の大きなデータを企業向けに配送するサービスで、いわば「電子宅配便」とも呼べるものだ。

特徴は、送り手と受け手の両者がソフトウエアを導入すれば使える手軽さや、通信が中断しても確実にデータを送ることができる安全性である。

ネットのつながる場所であれば世界中どこにでも配送でき、しかもリアルタイムで配送状況が確認できる。日本から中国の奥地に100メガバイトのファイルがわずか36秒で届くスピードもある。

技術に対する信頼性も高い。イーパーセルのシステムはほぼ自動化され、社員8人だけで運営している。にもかかわらず、クレームは年に数回あるかという程度で、契約の解約はほぼゼロだ。

そうした実績が信用を集め、顧客は、日産自動車やコマツをはじめとする約600社に上る。

実はこの電子宅配便サービスを支えるシステムにこそ、世界を驚かせる特許技術が詰まっているのだ。

例えば、データの受信を通知する技術をはじめ、他人のパソコンを遠隔操作する技術、そしてネット上で個人の嗜好や習性を収集・解析する技術など。これらはいずれもイーパーセルが開発し、特許を取っているものばかりだ。

いまやスマートフォン上でメールを受信したり、バージョンアップしたりした際には当たり前のようにポップアップが現れるし、電話による遠隔サポートサービスも普及している。個々の検索結果に関連した広告も日常的に配信されている。

つまり、前述の企業は、イーパーセルの技術を用いてさまざまなサービスを提供していることになり、特許に抵触していたというわけだ(イーパーセルが特許侵害とした特許の主な内容は下表参照)。

                                        IT産業に欠かせない仕組みばかり

イーパーセル(株)の持つ主な米国特許
出願年月 特許名 内容の概要
1996年11月  Smart Internet Information Delivery System Having a Server Automatically Detect and Schedule Data Transmission Based on Status of Clients CPU 自分宛に届いたデータがダウンロード可能になったことを画面上で知らせる仕組み。メール受信やバージョンアップ情報など通知画面が現れる機能(ポップアップ)に該当する
1997年2月  Marketing Data Delivery System ネットワークを介して個人の嗜好や習性を収集・解析。検索に関連した広告配信に必要となる仕組み
1997年2月  Robust Delivery System 通信が中断してもデータを確実に配送できる仕組み
1997年2月  Prioritized delivery and content auto select system 同じファイルを複数人に送る際、受信者の事情に合わせて最適となるようにデータ配送の優先度をつける仕組み
1997年4月  System for remote internet consulting, servicing and repair 他人のパソコンを遠隔操作して復旧や使用方法を教える仕組み。電話で遠隔サポートする場合に有効である
1997年11月  System for minimizing screen refresh time using selectable compression speeds ネットワークの環境に合わせてデータ圧縮率を調整し、配信速度を上げる仕組み
1997年11月  Automatic system for dynamic diagnosis and repair of computer configurations 利用者が操作しなくてもコンピューターが自動診断、自動修復する人工知能の仕組み

 

それもこれもイーパーセルに先見の明があったからだ。

もともと1996年の創業時に、ネットの爆発的な普及で電子取引の時代が到来することを予感し、物流最大手のフェデックスの配送の仕組みを研究、電子宅配便の構想をぶち上げていた。

同時に、世界プログラミングオリンピックのチャンピオンや、数学オリンピックの選手権参加者ら世界14ヵ国の最高峰の頭脳をかき集めた。

すべては、通信経路がいかなる環境にあっても、「荷主」から「荷受人」まで「荷物」が安全かつ確実に届くよう特化させた、電子配送専用の通信プロトコルを開発するため。要した時間はなんと1年足らずという短さだった。

仕上げは、98年から2001年にかけて米国特許11件を次々と取得したことであった。

そこに目を付けた会社があった。08年ごろから、「お宅の特許は使える。売ってくれ」などと複数の米特許運用会社から問い合わせが寄せられたのだ。

もともとそれらの特許が、IT業界の「宝」であることをわかっていたイーパーセルは、これを好機とみて運用会社を介して訴訟に踏み切ったのだ。

 

500の特許に引用 ネット事業に必須の技術

いま、世界ではIT企業同士の「特許戦争」ともいうべき争いが繰り広げられている。

アップルとサムスン電子は特許侵害訴訟を世界中で起こしているし、グーグルは昨年8月、約125億ドル(約1兆円)でモトローラ・モビリティを買収すると発表。その特許が狙いだったとみられている。フェイスブックに至っては、ヤフーに特許侵害で提訴されたため、IBMから特許を買収したもようだ。

まさに世界は血みどろの争い。そうした中、日本企業の特許に対する意識は極めて希薄だ。このような状況に挑んだイーパーセルの狙いは、和解で得られる数千万円の特許ライセンス料ではない。

北野譲治社長は「そもそも経営は安定しており、ライセンス料を得ても訴訟や弁護士の費用を差し引けばもうけはほとんどない。それよりも、自社の『知的資産』を積極的に活用するための経営戦略である」と言う。

事実、その知的資産は世界に認められている。

下表は、特許専門の調査会社パテント・リザルトの調べで判明した、イーパーセルの特許が他企業の特許にどれだけ「引用」されたかを示す件数である(12年2月末時点)。

                                        名だたる大手企業が参照している

イーパーセル(株)特許引用企業トップ10
順位 企業名 引用件数
1 マイクロソフト 26
1 IBM 26
3 ガーディアンデータストレージ 24
4 アメリカンエキスプレス 22
5 マカフィー 20
6 サイバートラスト 14
7 LG電子 12
7 アイロンマウンテン 12
9 XATRA FUND MX 11
10 ヤフー 9
10 ソニー 9
10 キュリオホールディングス 9
10 ヒューレット・パッカード 9
10 Dafineais Protocol Data B.V. 9
合計  505         

  *パテント・リザルト調べ/2012年2月末時点 米国特許商標庁に公開分

 

引用された特許は「先行特許」と位置付けられ、引用件数が多ければ多いほど、認知度が高いといえる。

マイクロソフト26件、IBM26件、マカフィー20件、LG電子12件、ヒューレット・パッカード9件……合計505件に上る引用件数から、世界の関心がいかに高いかがわかるであろう。

ベンチャー故に金融資産が少ない分、訴訟などを通じてこうした知的資産を世界に認めさせることで、ブランド価値を高めていくというわけだ。

イーパーセルは今後、訴訟対象を26社にまで広げていくつもりだ。

北野社長は「日本にも世界に誇れる技術があることを知っていただきたい。近い将来、時価総額世界1位のアップルにも、わが社の特許技術を提供したい」と意気込んでいる。

イーパーセルの投じた一石は、特許侵害訴訟という枠には収まらず、大きな波紋となって広がりそうである。

 

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